A:大石哲史【リア王】 |
私のうた.セリフの暗記法
1. 根性
こんにゃく座へは、自転車で通ってます。25分かかります。稽古が終わって、音が取れなかったり暗譜が出来ない時には(38才までは、かなり早く出来たもの、クソー!)、座に残ってピアノの前に座ってひたすら鍵盤を叩き歌う。でも1-2時間稽古をしても、ちっとも定着しない。そこで、こう決心する。この4ページだけはなんとか覚えないと、明日の稽古が恐ろしい!自転車で家に着くまでに絶対覚える!
出発….小さい声で歌っているのだが、すれ違う人はおよそ振り返る。ふん!
自宅マンションの自転車置き場に着いた、だけど、まだ2ページしか覚えてない……
仕方ない…….引っ返そう。自転車をUターンして、座に向かって引き返す。3ページ覚えたら家に戻ろう、と決心してうたいばしりを続ける。おっ!結構早く覚えたじゃないか、と思って右を見ると、大きな大きなオペラシアターこんにゃく座の看板!
何故か、ヒカルさんのソング、ゆっくりゆきちゃんが頭に浮かんだ。
2. 漢字を目に焼き付ける
リア王のセリフにこんな箇所がありました。
“王の使者に非礼を働くのは人殺しより悪辣な暴挙” ひらがなで書くと、”おうのししゃにひれいをはたらくのはひとごろしよりあくらつなぼうきょ” これがなかなか、なかなか覚えられなかった。そこで、あまり使った事のない3つの言葉 非礼 悪辣 暴挙 を、声を出しながらゆっくりと漢字を指で目の前になぞりながら、ひ れ い と書いて目の前に定着していった。同じく、あ く ら つ 、ぼ う き ょ と書いていった。この動きを5回位繰り返してるうちに、瞬きを一回すると、非礼、もう一回すると、悪辣、もう一回すると、暴挙 と漢字がシャッターを切る様に浮かんでくる様になった。あとは、続けて読んでみると瞬きをしなくても 王の使者に 非礼を働くのは人殺しより 悪辣な 暴挙 と喋れた。
3. 違う言葉にして覚える
何度稽古しても、出てこない言葉が二つありました。”おまえの忠勤ぶりがのろまであれば” の 忠勤。そして、”夜通し旅を続けたからだと?口実に過ぎぬ”の 口実。普段あまり使わない言葉にしてもひどすぎる。一度10回忠勤と言ってから、文の頭から喋ってみたがやはり忠さえも出てこなかった…….. そこで、別の言葉で置き換える事にした。忠勤は駐禁に!口実は工事中に。すると大成功!
何でだよ…………。
Q:稽古場で稽古する時と、舞台で衣裳も着て、照明も当ててという時で、場の雰囲気が全く異なってきますよね?演じる気分もやはり違ってきますか?
A①:彦坂仁美【オズワルド】 |
舞台ではお客様がいらっしゃるということが稽古場と全く違うところだと思います。
お客様に楽しんでいただかなくちゃ!緊張してる場合じゃない!と自分に言い聞かせて舞台に立つので、稽古場とは全然違う気分になります
A②:川中裕子【リーガン(B組)】 |
Q:コーディリアの帽子が道化の帽子と一緒なのはどんな意味か。
A:沖まどか【道化2】 |
こんにゃく座の『リア王』では、萩さんの思いつきにより2人の道化となりました。
そこから演出家のイメージとして、金村(男)がリア王が一番愛したコーディリアの影として、沖(女)がリア王が本当に欲しかった息子というイメージで衣裳など考えられていたのだと思います。
そしてここだけの話、メイクは演出家からのオーダー。
衣裳の宮本さんの衣裳画にも白塗りと書かれていましたが、沖に求められたイメージとしんちゃん(金村)に求められてメイクのイメージは全然違いました!
イメージ画はコレ↓
こんな機会も滅多にないと思うので、沖のメイクの過程を…
まずは白を丸く。
赤で裂けてる唇と目の大枠を。
黒で目の周りと目と目の間を。
それを赤でぼかし。
もっと赤がいいなというところの赤を足し。
赤い涙を流す。
出来上がり☆
毎日同じにはできないけれど、顔にお絵描きしているみたいで、とっても楽しかったです♪♪♪
Q:こんなにみんな死んじゃうなんて!!『リア王』がずーーーーっと演じ続けられているのはなんでなのでしょう?こんなヒドイ話なのに!
A:萩京子【作曲・音楽監督】 |
みんな次々と死んでいくのは悲劇の定石。
上のふたりの姉妹の強欲さと色に溺れるところ。
リア王の軽率さがもたらす悲劇的な展開とリア自身の後悔が狂気というかたちで深く描かれているところ。
グロスター父子の因縁。
などなど古今東西を問わぬ人間の営みの哀れが描かれているところが、人々の心をとらえるのだと思います。
そして今回、おぺら小屋の中で出演者が書いていた”自分が出会った名言”について、集いの機会に萩さんにも話していただきました。
1つ目は映画監督、黒澤明さんの言葉。
悪魔のように細心に、
天使のように大胆に
2つ目は劇作家、井上ひさしさんの言葉
むずかしいことをやさしく、
やさしいことをふかく、
ふかいことをおもしろく、
おもしろいことをまじめに、
まじめなことをゆかいに、
そしてゆかいなことはあくまでゆかいに
萩さんがどんなことを考えながら作曲をされているのか、音楽監督としてどのような目線でこんにゃく座のオペラ作りをしているのか・・・その一端をこっそり覗けたような気分になりました。(小林)